#49 筋トレ初心者、まず何から始めていくか

筋トレ初心者

初心者の方に対してまずどのような運動から指導していくか、クライアントの目的や身体の状態、また指導するトレーナーやジムによっても様々かと思います。
今回は当ジムに入会された方(初心者・経験者問わず)に対して最初に行っていく運動やエクササイズおよびその考え方についてまとめました。

基本はベーシック種目

「いつまでも健康で動ける身体を維持したい」
「筋肉をつけて良い身体になりたい」
「競技で良い成績を残したい」
「腰痛・膝痛などの身体の不調を改善したい」
などなど

体力の向上は、このような目的達成に大きく貢献します。
そして筋トレの最大の利点はこの「体力」の土台である「筋力」と「柔軟性」を安全に効率良く高められること。
そのためにも、当ジムでは「ベーシックな筋トレ種目を”大きく(=可動域を大きく使って)・力強く(=重量を持って)・正確に(=狙ったフォームで正しく)”実施できるようにする」ことを目標としています。

参考記事:ERSTRE(エアストレ)で実施している筋トレ種目

クライアントの最終的な「こうなりたい」は違っても、トレーニングで貢献できること、やるべきことがはっきりしている以上、クライアントによってトレーニングの実施内容自体が大きく変わることはありません。
もちろん食生活などの生活習慣やトレーニングを継続していくためのご提案は最大限個別性を考慮してアドバイスさせていただいています。

 

逆算して考える

では実際にこれらベーシック種目を初日からどんどん実施していくかというと決してそういうわけではありません(フォームが比較的容易な上半身エクササイズは実施していくこともあります)。
特にスクワットやデッドリフトなどは、一見シンプルに見えるエクササイズですが、目的によってはフォームは案外複雑で、そのためには筋力や柔軟性などがある程度備わっていないと、そのフォームを取ること自体が難しかったりします。

スクワットを例に取れば、スクワットを(目的に合った)正しいフォームで実施するためには、どの部位の筋力や柔軟性が必要なのか、そしてクライアントに現在足りていない要素は何か。

目標とすべきゴールが明確で、そこにたどり着くまでに必要な要素を理解し、そしてクライアントの動きを適切に評価できれば、その段階ごとにどんなエクササイズをどのように行っていけばいいかは自ずと見えてくるでしょう。

トレーナーとしては、これらの質が高いほど良い指導が出来ると思います。
何だか偉そうに書きましたが、どんな方にも完璧に対応できる指導者はそういないでしょう。私も日々精進です。

 

初期段階の運動・エクササイズ例

上記のように目標とすべきエクササイズおよびそのフォームが決まった上で、最も初めに実施するのは、

①骨盤の前傾・後傾ができるか
②ハムストリングが伸びる感覚が分かるか
③お尻の筋肉を使う(力が入る)感覚が分かるか

の確認です。

①ペルヴィックティルト

ペルヴィック(Pelvic)は骨盤、ティルト(Tilt)は傾きという意味の言葉で、写真のように骨盤を起こしたり(前傾)、倒したり(後傾)できるかどうか。
特に骨盤の前傾は筋トレを正しく行なっていく上で基本となるとても重要な動きで、後述するお尻の筋肉やハムストリングを使えるようにするためにも欠かせない身体の使い方になります。

ペルヴィックティルト

骨盤の前傾(左)と後傾(右)

白い線が簡略化した骨盤と背骨のイメージです。
三角形が骨盤、その上に伸びている線が背骨です。
骨盤が前傾した時には、それに伴って背骨の腰の部分(腰椎)は少し反った形になります。
クライアントにはよく「腰のアーチ」と説明しています。

 

②ハムストリング(大腿裏側)のストレッチ

ハムストリングについて簡単に説明した上で、座位や立位でストレッチをし、「ハムストリングが伸びている」という感覚を理解してもらいます。
人によって柔軟性には大きな差があるので、膝の屈曲角度の程度で伸び方は変わりますが、この感覚を理解していただくことはそれほど難しくはありません。

 

③臀筋群エクササイズ

「お尻の筋肉を使う」というのがどういう感覚なのかを理解してもらいます。
姿勢や動作パターンにより難易度も変わりますが、いくつかご紹介します。

 

ヒップエクステンション

立位での股関節伸展動作。
股関節のみが動く単関節運動なので、お尻に力が入る感覚を容易に理解できると思います。

ヒップエクステンション

 

ヒップリフト

股関節だけでなく、膝関節も関与してきますが、動き自体はとても単純です。

ヒップリフト

ただ、お尻を使う感覚が鈍い方は、これを行うとお尻ではなく腰に効いてしまう方もいます(当ジムのクライアントにもいらっしゃいました)。

 

ステップアップ

大腿前側にある大腿四頭筋も大きく関与してくる複合動作で、この動きの中でもお尻の筋肉を使う感覚が分かるかどうか。
①の骨盤の使い方と合わせて、上がり方を何パターンか試してもらい、どう上がるとお尻の筋肉を使えるのかを理解してもらいます。

ステップアップ

 

ヒップヒンジ

そしてこの3つが理解できると、筋トレを適切に実施していくために重要な動きである「ヒップヒンジ(Hip Hinge)」が習得しやすくなります。
ヒップ(Hip)は股関節を(股関節は英語でHip Jointといいます)、ヒンジ(Hinge)はドアの蝶番を指す言葉です。
ヒップヒンジとは、股関節を軸にして、身体を蝶番のように動かす使い方で、スクワットやデッドリフトはもちろん、ランジやベントオーバーロウなど、多くのベーシック種目で必要とされる動きです。

ヒップヒンジ

ヒップヒンジ動作(左)とエラー(右)

この動きで主に必要なのは、お尻の筋肉(臀筋群)やハムストリングの筋力・柔軟性、骨盤の前傾。
上に挙げた3つの実施項目も、このヒップヒンジをしっかり理解してもらうための下準備のようなものです。
経験上、特に筋トレ初心者の方に対しては、いきなりヒップヒンジから入るよりも、それぞれを分けて実施し、これらを理解していただいてからの方が、結果的にスムーズに動作が習得できることが多いです。
また、後に様々なエクササイズを実施していく中で、動作中にフォームが乱れた時に「腰のアーチ」「ハム」「お尻」といったワードを含んだ短い言葉がけのみで、クライアントが瞬時にフォームを修正してくれることもあります。
これもクライアントが骨盤やお尻・ハムストリングの使い方をしっかり理解しているからこそでしょう。

 
そしてこのヒップヒンジ動作を鍛えていく代表的なエクササイズがルーマニアン・デッドリフト(Romanian DeadLift、以下RDL)です。

動画ではそれなりの重量を持っていますが、初めはほぼ無負荷のプラスチックバー、もしくは軽いバーベルやダンベルを用いて動作を行なっていきます。
フォームの解説については割愛しますが、RDLはお尻やハムストリングの筋力・柔軟性を高めるとても有効なエクササイズ。
また、下半身だけでなく肩甲骨周りや腰といった背部の筋力も必要になります(つまりこれらの筋肉も鍛えられるということです)。

背部やお尻、太腿裏側と、RDLは主に身体の後ろ側の筋肉を刺激するエクササイズですが、これら後面の筋肉群はポステリオルチェーン(Posterior Chain)と呼ばれ、効率的な身体の使い方をするためにとても重要な役割を担っています(当然、姿勢を良くしたり、ヒップアップしたりと見た目の改善効果も高いです)。
多くのベーシック種目においても、これら後面の筋肉がしっかり使えるかは重要なポイント。
もちろん、このRDL自体が重要なベーシック種目の1つでもあります。

 

種目はあくまで手段

当ジムに入会された方に対して、初めに実施していく運動・エクササイズに関する考え方を実例を上げてご紹介しました。
改めて申し上げますが、これらは最終的に「ベーシックな筋トレ種目を”大きく・力強く・正確に”実施できるようにする」という目的のための初期段階として主に実施するエクササイズの一例になります。
当然、これが全てではありませんし、何らかの問題でうまくできなければ代替エクササイズを実施することもあります。
逆に、トレーニング経験も身体や動作への理解もあり、基礎的な筋力や柔軟性も有していれば、少し難易度を上げたエクササイズから始められるかもしれません。
そして、体力レベルに合わせてエクササイズや負荷を漸進させていき、最終的にはスクワットやデッドリフトといったベーシック種目に繋げていくことになります。

しかし、そのスクワットやデッドリフトでさえ、目的ではなく、あくまで手段。
真の目的はそれらを行うことによってもたらされる「筋力や柔軟性の向上」「筋量増大」「骨や腱・靱帯といった結合組織の強化」「身体の使い方の習得」といった身体の適応です。
このような効果を得るためには、ベーシックな筋トレ種目が適切に実施できることが最も効率が良いわけですが、クライアントの体力レベルや既往歴は実に様々。
特にご年配のクライアントに多いのですが、怪我や病気による手術・後遺症などの影響から、どうしてもこれらの種目の実施が難しい方もいらっしゃいます。
そのような方に対して、どうトレーニングしていくか。
種目をリグレッション(難易度を下げる)したり、バーベルではなく、ダンベルやバンドを使ってみたり、代替種目を実施したりと、工夫はいくらでも出来ます。
もちろん、当ジムにはないマシンエクササイズが有効なこともあるでしょうし、私よりも別のバックグラウンドを持った専門家の方がお役に立てる場合もあるでしょう。

置かれた状況(体力レベル、既往歴、トレーニングに使える日数や時間、施設など)の中で、クライアントの目的達成のために最も貢献できる方法は何なのか、常に考えていきたいと思います。

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宇都宮市のパーソナルトレーニングジム
トレーニングハウス
「ERSTRE(エアストレ)」
代表 工藤 駿(プロフィール)
TEL 028-348-3870
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◆編集後記

ラグビーW杯もいよいよ決勝トーナメント。
大会公式ソングではないですが、リポビタンDのCMで流れるB’zの曲もカッコイイ。