#93 「特異性の原則」〜効果的なトレーニングのために〜

安全・効果・効率的なトレーニングのために押さえておきたいトレーニングの原則。
8回目の今回は「特異性」です。

 

特異性の原則

 
「トレーニングによる身体の適応は、与えたトレーニング刺激に対して特異的に起こる」という意味で、SAID(Specific Adaptation to Imposed Demands)の原則とも呼ばれます。

スピードを上げるトレーニングをすればスピードが向上します。
持久力のトレーニングをすれば持久力が向上します。
筋力トレーニングをすれば、筋力向上や筋肥大が起こります。
筋トレでも、スクワットをすれば主に下半身が、ベンチプレスをすれば胸や肩、腕などの押す動作に関わる上半身の筋肉が強くなります。
可動域を限定したしゃがみの浅いスクワットをすれば、その可動域での筋力が向上しますし、ゆっくり動作を行えば、その速度での筋力が向上します。
逆に言えば、持久力のトレーニングをしても筋力向上や筋肥大は起きませんし、ベンチプレスをしても下半身が強くなるわけではありません。
しゃがみが浅いスクワットを続けても、深くしゃがんだところでの筋力は向上しませんし、ゆっくり動かすトレーニングしかしていなければ速い速度での筋力は上がりません。

前置きが長くなりましたが、要するに「やったものが向上して、やっていないものは向上しない」ということです。

「そんなことは当たり前だろう」と思われるかもしれません。
たしかに、一般的な身体作りのために筋トレをするといった場合では例えば「胸を鍛えるためにスクワットをする」といったような、目的に対して手段が明らかに適切ではないケースはほとんどないでしょう。

この原則が誤って理解・実践されてしまうことが多いのは競技スポーツにおける体力トレーニングの現場ではないでしょうか(私も駆け出しの頃にこのような誤った考え方のもとにトレーニング処方をしてしまっていたことがあったので…)。

例えば、よくあるのが「筋トレにおいてエクササイズを競技中の姿勢や動作に似せた形で実施する」というケース。
「競技力を向上させたいから、トレーニングもそれに近い形にして実施する」。一見特異性を考慮した真っ当な考え方のように思えます。
しかし、そもそも競技の動きを改善するのが目的であれば、それはもはやトレーニングではなく競技練習。
しかも、こういった場合は筋力向上に適切とされる安全で正しいフォームからは外れた形になってしまうことがほとんどです。
また、仮に形が似ていても、動きの速度や時間、筋肉の力の発揮の仕方(収縮様式)、エネルギー供給などが明らかに異なっていれば動きの改善にも繋がるのかどうか疑問です(これらを「生理学的特異性」と言います)。
結果として筋力向上効果もさほど起こらず、また安全でないフォームにバーベルやダンベルなどで負荷をかけてしまっているために傷害を引き起こしてしまうこともあり、まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」的な状態になってしまいます。

トレーニングの根本の目的は筋力やパワー、柔軟性、アジリティ、持久力等の各体力要素を向上させることであって、その競技の動きを改善することではありません。
であるならば、トレーニングはやはりその各体力要素が安全・効率的・最大限に伸ばせるやり方で実施すべきでしょう。
あくまで「トレーニングはトレーニング」「競技練習は競技練習」ということですね。

目的達成のために身体にどんな刺激を与えてどのような適応を引き起こす必要があるのかを明確にすること。
我々トレーニング指導者にとって「特異性の原則」はこの大切さを改めて考えさせてくれます。

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宇都宮市のパーソナルトレーニングジム
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代表 工藤 駿(プロフィール)
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◆編集後記

モバイルモニターを購入。
ノートPCと合わせて2画面になるので作業効率がだいぶ上がります。